はじめに
はじめまして。株式会社サイカでCorporate Engineeringを担当しているサガミです。
今回はCorporate Engineeringとして移転で取り組んだことを紹介したいと思います。
社内ITの担当者、総務担当者、移転プロジェクトを担う方々の参考になればと思います。
Corporate Engineeringとは
一般的には情報システム部門と同義の部門です。
業務範囲は業務ツールの運用保守や情報セキュリティ対策、社内の基盤システムの運用保守から、社内ネットワークの保守、資産管理など一般的な情報システム部門と同じ範囲ですが、サイカにおける情シスの役割を持つ Corporate Engineering は、【会社のフェイズの変化に対応できる状態を Engineering を活用して作る】ことをテーマとして、社内と積極的にコミュニケーションをとりながら主体性を持って活動している性格を持ちます。
そのため、ヘルプデスクや入社対応など他部署連携が必要なプロジェクトも主管業務に含んでいます。
今回のオフィス移転もそういった文脈の中でのプロジェクトで、主にオフィスレイアウトやネットワーク、資産となる部材や機材の管理と購買などを担当しました。
今回の記事では、サイカのオフィス移転を Corporate Engineering の視点からご紹介します。
オフィス移転の構築
オフィスを移転すると一言でいっても、一般的な引越しとは大きく異なり、かつ序盤に方向性を固めておかないと取り返しがつかない内容も多々あります。
会議室の数と規模をこれまでの傾向からどのように設計するか、従業員のオフィス内の導線はどうなっていると効率が良いか、会議室エリアの社内ネットワークのセキュリティレベルはどうするか、入退室のセキュリティ要件はどのレベルで設けるか、オフィス什器はどれだけの量とスペックを用意するべきかなど事前に押さえておくべき条件が多々あります。
すべての内容を話すとブログに収まりきらないため、今回は
「新オフィスのセキュリティ設計をどう考えるか」
「社内のネットワーク設計をどう考えるか」
この2つにフォーカスし、個人的に躓かないように心がけた秘訣も合わせて紹介できればと思います。
新オフィスのセキュリティ設計をどう考えるか
まず、セキュリティエリアは3段階に分けています。
来訪されるお客様が入れるエリア(Level 1)
従業員のみ入れる執務エリア(Level 2)
サーバルームのような重要情報を保管し限られた従業員しか入れないエリア(Level 3)
に分けた構成で、Level 2 以降は入館カードを使わないと入れない制御をしたり、Level 3 ではさらに監視カメラを設置して入室ログが残るようにしています。
これらの点は内装工事などの別スケジュールの兼ね合いもあるため、後から気づいて対応しようとすると工事費用が増えたり、スケジュールの遅延が発生して全体に大きな損失を与えてしまいます。
設計の段階ではまだ工事が行われていないので、頭の中で想像を膨らますしかありません。
個人的にポイントを挙げるならば、第三者へ相談する前に、自分の中で形ができたら一呼吸を置いて別日に見返してみることかと思います。
相談すると最適な回答が得られるかもしれませんが、オフィス移転の課題は他にも盛り沢山、自分の力で解決しないといけないケースも多々あります。
前提として自分の力で解決できるように意識を持ちつつも、いざという時には相談する選択肢を取るように心がけるのが成功の秘訣かと思いました。
伝えたいことをイラストにしてみる
オフィス移転はあらゆる部署の連携が必要となります。
自部署にとって当たり前のことも、他部署にとっては当たり前でない事が多々あります。特に、引越しという誰もが一度は経験したことがあるであろうテーマなので、尚更「◯◯だろう」とバイアスが生じて認識不足に陥りやすいです。
あえて、端的に伝えるよりも丁寧に伝えるよう意識し、認識のずれや勘違いを発生しづらくすることが重要になってきます。
そのため、Google スライドでイラスト化し、視覚的にわかりやすく伝えることを意識しています。イラスト化することで、自分自身の理解の整理にも繋がります。
レイアウトのコンセプトを知る
IT寄りの業務のみであればコンセプトを知らなくても進められます。
しかし、「いざオフィスが出来てからセキュリティ要件を満たすために目張りが必要になった」など、完成してからコンセプトと対立する形でセキュリティ要件を満たすのでは意味がないと考えます。
セキュリティエリアのレイアウトを考えていく上で、オフィスレイアウトのコンセプトにどういう思いが込められているのかを理解しておくと、平面図からコンセプトを知って、より立体的にレイアウトを考えることができ、セキュリティと利便性とコンセプトを両立させていく事ができると考えて取り組んで行きました。
例)受付エリアとオフィスエリアを仕切るはガラス張りの壁なのか、ガラス張りの場合、全面なのか部分的なのか。会議室の仕切りはパーティションなのか、ガラス張りなのか。音漏れや画面の覗き込み対策はどうする?など・・・
社内のネットワーク設計をどう考えるか
サイカはほぼ全ての社員がWi-Fiに接続して仕事をする環境です。
アクセスポイントの設置場所1つをとっても、座席のレイアウトや出社状況、壁などの障害物の有無など注視することが多く、オフィスレイアウトを担当するコンサルタントとの連携がかなり多くなりました。
またお客様との打ち合わせを行う会議室において、Wi-Fiの不調などで業務継続が困難になるケースも想定すると、代替案としてLANケーブルの敷設も保険として持っておくのが得策と判断しました。
ネットワークは求めれば求めるだけ必要な要素が出てきます。
今の会社にとって必要なもの、まだ必要ではないものなどを取捨選択しつつ、自分としてはどういう構成にしたいか、そして役員陣が納得いく説明をするにはどうすべきか、という点を考慮しました。
直接ネットワークとは関係ない部分かもしれませんが、当たり前だと思っていた構成がなぜ必要なのかと考え直すきっかけになりました。
思わぬ問題
オフィスの拡張に伴って、既存のネットワーク装置機器のみではカバーできず、追加で機器の導入が必要になりました。
しかし、2022年は世界的に半導体不足に陥った年で、選定を開始した2022年6月頃の時点で、即注文しても納品が1年以上先になるかもしれない状況でした。
そのため、納品されるまでレンタル製のネットワーク装置を契約しつつ、既存のネットワーク装置も使う、ハイブリッドなネットワーク環境を計画していました。
幸いにして、注文の1ヶ月前に納品スケジュールが判明したため、レンタル製品の契約はせずに済みました。
こればかりは時期的に運が良かったと安堵しました。
移転当日も大忙し
自分たちの力でなんとかなるような業務を軽視してしまった結果、移転当日は大忙しでした。
座席数が増えるため外付けディスプレイを数十台買い足したり、ユーザー体験向上のためにスタンディングデスクに大画面ディスプレイをモニターアームを使って取り付けました。
まさにここは完全な力仕事で、普段デスクワークの私には体力的に限界でした。
色々なメンバーが助けてくれたお陰で、無事に業務ができる状態で移転初日を迎えられました。
最後に
オフィス移転を終えた今、改めて振り返ってみると、このプロジェクトをスケジュール通りに完遂できたのは、「何事もジブンゴト化して進めていった」結果であったと思います。
今回のオフィス移転に関わったメンバーは全員、自部門の業務とオフィス移転業務を兼任していたため、「誰かがやってくれる」ではなく「自分でやらないと」という考えで進めないとうまく進みませんでした。ジブンゴト化、当事者意識という言葉が重要なプロジェクトだと感じました。
一方で、うまくいかなかった点を挙げるならば、ミスが許されないネットワーク周りを意識しすぎた結果、ファシリティ面で従業員目線が足りなかった点です。
移転前に、一人用の個室会議室へ入って従業員目線でパソコンを開いたり、外部ディスプレイに繋いで業務をしてみることができていたら、もう少し細かい気配りができたかもしれません。
この点は、オフィス移転業務に絡んでいない従業員に声を掛けるなどして、移転前に体験してもらうような工夫をしていれば解決できたかもしれません。
最後に、今回の移転先である六本木ティーキューブビルは真横や真後ろにビルが隣接していないので、Wi-Fiの外来波や遮光性から見ても非常に快適な環境です。
また室内も、遮る壁などをできる限り減らしてガラス張りにすることで閉塞感をなくすデザインが取られたため、結果的にWi-Fiの電波が遮られるケースが少なく、以前よりも快適な環境が提供できております。
結果的には非常に良い結果を得られたプロジェクトでした。